ホランドの「RIASEC」徹底解剖ガイド
自分の「好き」から未来の仕事を見つける
セクション1 はじめに – あなたの「興味」が最強のコンパスになる
なぜ私たちは「将来の夢」で悩むのか?
「将来、何になりたい?」
この質問は、私たちの一生について回る、最もワクワクすると同時に、最も難しい問いの一つです。小学生から中学生、高校生、そして大学生に至るまで、多くの人が自分の進路について真剣に悩みます。
もしあなたが今、「自分にはやりたいことがない」「何に向いているかわからない」と感じていたとしても、それは決してあなたに才能や魅力がないからではありません。
それは単に、「世の中にどんな選択肢があるのか」、そして「自分が本質的に何を好み、何に価値を置くのか」を知るための、信頼できる「地図」を持っていないだけなのです。
このガイドは、その「自分を知るための地図」として、世界中で最も信頼され、活用されている理論の一つを紹介するために作成されました。
ホランド理論の核心 「あなた」と「仕事」の相性診断
このガイドで紹介するのは、アメリカの心理学者ジョン・L・ホランド博士によって開発された「職業選択理論」(RIASECモデル)です。なぜ、数あるキャリア理論の中で、この理論を最強のツールとして推奨するのか。それは、この理論が非常にシンプルでありながら、本質的な真理に基づいているからです。
ホランド理論の核心は、「人は自分のパーソナリティ(性格や興味)に合った環境(職業)を選ぶときに、最も満足感を得て活躍できる」という考え方です 。これは「個人と環境の適合(一致性)」と呼ばれています 。
この理論の画期的な点は、「個人の性格」と「職業環境(仕事内容)」を、「RIASEC」という全く同じモノサシで分類できるようにした点にあります 。
これは、多くの学生が「自分の性格(例:内向的、外向的)」と「仕事の内容(例:営業、研究)」を別々のものとして考え、どう結びつければよいか分からなくなる問題を解決しました。ホランド理論を使えば、「自分(個人)は、S(社会的)タイプが何点あるか」を測り、「あの仕事(環境)は、S(社会的)タイプが何点あるか」を調べることができます。そして、その二つの点数が近ければ近いほど、あなたの満足度や達成度は高まる、と予測できるのです 。
したがって、キャリア選択とは、自分に合った職業を「探す」作業であると同時に、自分の「RIASEC」の得点と、仕事の「RIASEC」の得点を調べ「マッチング作業」であると定義できます。このガイドは、その作業を皆さん自身で行えるよう、深く、そして分かりやすくお手伝いします。
このガイドの使い方 診断結果を「答え」ではなく「ヒント」にする
RIASECは、「あなたはこの仕事にしか就けません」と決めつける「占いの予言」ではありません。
これは、あなたの「興味の傾向」を示し、あなたがどちらの方向に進めば幸せを感じやすいかを指し示す「コンパス」です。
実は、日本の中学校や高等学校の進路指導で広く使われている「職業レディネス・テスト」 や、キャリアガイダンスで使われる「VRTカード」 も、その多くがこのRIASEC理論に基づいています。
また、ハローワーク(公共職業安定所)での職業あっせんにも、この理論が活用されています 。
もし学校でこれらの検査を受けたことがある人は、このガイドを「答え合わせ」として読んでみてください。なぜ自分がその結果になったのか、その結果をどう活かせばよいのか、その全てがクリアになるはずです。
セクション2 RIASEC(リアセック)とは? 6つの「好き」のタイプ
6つのタイプの概要紹介 ホランド博士が見つけた「興味」の地図
RIASEC(リアセック)とは、ホランド博士が見出した、人々の興味や価値観の6つの基本的なタイプを指す頭字語です 。
- Realistic (現実的):「モノ」と「カラダ」の実行者
- Investigative (研究的):「ナゼ?」を探求する思考者
- Artistic (芸術的):「美」と「新」の創造者
- Social (社会的):「ヒト」に寄り添う支援者
- Enterprising (企業的):「コト」を動かす説得者
- Conventional (慣習的):「ルール」と「データ」の組織者
ホランド理論によれば、私たちのパーソナリティは、これら6つのタイプのいずれか、または複数の組み合わせで説明できるとされています 。
最重要!「六角形モデル(ヘキサゴンモデル)」の秘密
RIASECの6タイプは、単に並んでいるわけではなく、下の図のような「六角形(ヘキサゴン)」で配置されています 。この配置こそが、ホランド理論の最も重要な「秘密」であり、キャリア選択の深いヒントを与えてくれます。

この六角形モデルには、2つの重要なルールがあります 。
第一の秘密「一貫性(Consistency)」
六角形で隣り合っているタイプ同士は、心理的に似ている(興味の方向性が近い)とされます 。
- 例(一貫性が高い): R(現実的:モノを扱う)と I(研究的:モノを分析する)は似ています。
- 例(一貫性が高い): S(社会的:人に寄り添う)と A(芸術的:人の感性に訴える)も似ています。
自分の興味が隣り合うタイプ(例:SとA)である場合、両方の興味を満たす仕事(例:アートセラピスト)を見つけやすいと言えます。
第二の秘密「対極」
六角形の対角線上にあるタイプ同士は、最も似ていない(興味の方向性が対極にある)とされます 。
- R(現実的:モノ、ルール重視) S(社会的:ヒト、感情重視)
- I(研究的:分析、探求重視) E(企業的:説得、実行重視)
- A(芸術的:自由、革新重視) C(慣習的:秩序、ルール重視)
この「対極」の理解こそが、キャリアのミスマッチを防ぐ鍵となります。例えば、あなたが「機械いじりも好き(R)だけど、人と話すのも大好き(S)」という場合、あなたは素晴らしい個性を持っています。しかし、ホランド理論は、RとSは「対極」にあるため、「一つの仕事」でその両方の価値観を同時に満たすのが難しいことを示唆しています 。
この場合、RとSのどちらの価値観を仕事の「核」に据え、どちらを「趣味」や「副業」にするかを戦略的に考える必要があります。このように、六角形モデルは、自分でも気づかなかった「自分の内なる葛藤」を視覚化し、解決策を考えるためのツールとしても機能するのです。
あなたの「ホランド・コード」を見つけよう
通常、職業興味検査の結果は、あなたが最も強く興味を持つ上位3つのタイプの組み合わせで表されます(例:「SAI」や「RCE」)。これをあなたの「ホランド・コード」と呼びます。
この後のセクションを読みながら、自分が「これだ!」と思うタイプに、1位、2位、3位と順位をつけてみてください。あなただけのホランド・コードが見つかるはずです。
アプリのご利用及び結果はあくまでも参考としてお考えください。当コンサルでは責任を一切負いません。ご利用される方は自己責任でご利用ください。
ー職業興味診断ーあなたの「ホランド・コード」を見つけよう
ホランド理論とは?
アメリカの心理学者ジョン・L・ホランド博士が開発した職業選択理論です。
人の興味や価値観を RIASEC の6タイプで分類し、仕事との相性を見ます。
⚠️ ご利用上の注意
簡易版の自己理解ツールです。進路の最終判断は専門家とご相談ください。
適職例
学科の方向性(ヒント)
各タイプの得点
六角形モデルによる一貫性分析
⚠️ 診断結果について
参考情報として活用してください。当コンサルはこのアプリにおけるいかなる責任も負いません。
RIASEC 6タイプ早わかり表
各タイプの詳細に入る前に、全体像を把握するための早わかり表(に基づく)を示します。
| タイプ | タイプ | 興味の対象 | 大切にする価値観 | キーワード | よくある誤解(と真実) |
|---|---|---|---|---|---|
| Realistic | 現実的タイプ | モノ、機械、動物、植物 | 具体的、実践的、目に見える成果 | 手作業、道具、アウトドア、ルール | 誤解: 勉強が苦手。 真実: 抽象的な理論より「実践的な知性」や「身体知」に優れている。 |
| Investigative | 研究的タイプ | データ、理論、アイデア | 探求、分析、論理、真実 | なぜ、研究、観察、知的好奇心 | 誤解: コミュニケーションが苦手。 真実: 高度な議論や専門家同士の「論理的な」コミュニケーションが求められる。 |
| Artistic | 芸術的タイプ | アイデア、デザイン、感性 | 美、独創性、自由、自己表現 | 0から1、直感、非伝統的、個性的 | 誤解: 気まぐれで社会性がない。 真実: 自分の内面を形にし、他者に「伝える」という高度な表現行為を行っている。 |
| Social | 社会的タイプ | ヒト、チーム、社会 | 貢献、共感、奉仕、協調 | 教える、助ける、癒す、人のため | 誤解: ただの「いい人」。 真実: 人の成長や問題解決を導く「傾聴」「指導」「調整」の専門家。 |
| Enterprising | 企業的タイプ | コト(目標)、組織、ヒト | 影響力、リーダーシップ、結果 | 説得、競争、目標達成、ステータス | 誤解: 強引で自己中心的。 真実: 目標達成のために人を巻き込み、やる気を引き出す「推進力」を持つ人。 |
| Conventional | 慣習的タイプ | データ、ルール、仕組み | 正確性、計画性、信頼、秩序 | 几帳面、マニュアル、効率、データ処理 | 誤解: 地味な作業が好きなだけ。 真実: 組織や社会の「信用」と「基盤」を支える、極めて重要な役割を担う人。 |
セクション3 【R】現実的タイプ(Realistic)- 「モノ」と「カラダ」の実行者
Rタイプのあなたはどんな人?
キーワード: 手作業、道具、機械、アウトドア、生き物、スポーツ、具体的、実直、ルール、目に見える成果。
R(現実的)タイプの核心は、「五感で確認できる現実」への信頼にあります。抽象的な理論(Iタイプ)や、目に見えない人の感情(Sタイプ)よりも、自分の手で触れ、動かし、修理し、結果が「カチッ」と音を立てて組み上がる瞬間に、最大の満足を感じます。
彼らは「なぜ?」と問う(I)よりも、「どうやって?(How to)」と問い、物事を具体的に動かすことを好みます。実直で、ルールや手順を守ることを重んじる傾向があります。
Rタイプが輝く仕事の共通点
Rタイプの人は、「モノや機械を扱う規則的な職場(例:工場、建設現場)」を好むとされています 。この「個人と環境の適合」 が満たされる仕事の共通点は以下の通りです。
- 明確なルールや手順があり、それに従うことで確実な成果が出せる仕事。
- 体を動かすこと、または精密な手作業が求められる仕事。
- デスクで理論をこねるよりも、現場(フィールド)での作業が多い仕事。
Rタイプの適職リサーチ(分野別)
① 製造・技術系:
- 機械エンジニア、電気工事士、自動車整備士、溶接工、航空整備士
- システムエンジニア(ハードウェア寄り)、プログラマー(※RとCの混合)
- 航空管制官(RとC)、パイロット、電車の運転士
② 建設・インフラ系:
- 建築家(※A/R)、大工、とび職、左官
- 土木技術者、測量士、都市プランナー
③ 自然・動物・食系:
- 農業従事者(農家)、酪農家、林業、造園士、ガーデンデザイナー
- 獣医師(※R/I/S)、トリマー、水族館の飼育員、動物調教師
- 調理師、パティシエ(※R/A)、パン職人
④ 医療・身体系:
- 歯科医師(※R/I)、歯科技工士
- 理学療法士(※R/S)、作業療法士(※R/S)、義肢装具士
- アスレティックトレーナー、スポーツ選手、スポーツインストラクター
- 警察官、消防士、自衛官
小中高生へのアドバイス 今、何を学ぶべきか?
好きな教科: 理科(実験)、技術・家庭科、体育、図工。
アドバイス: プラモデル作り、料理、DIY、プログラミング(特にロボットや電子工作など、モノを動かす系)、部活動(体育会系)など、とにかく「手を動かす」経験を積みましょう。また、Rタイプの仕事は、しばしば危険を伴ったり、他人の安全を守ったりします。そのため、「安全ルールを守る大切さ」(C的側面)も同時に学ぶことが非常に重要です。
セクション4 【I】研究的タイプ(Investigative)- 「ナゼ?」を探求する思考者
Iタイプのあなたはどんな人?
キーワード: 探求心、好奇心、分析、観察、合理的、知的好奇心、独立、論理、データ、真実、なぜなぜタイプ 。
I(研究的)タイプの核心は、「未知のものを既知のものに変える」という知的興奮にあります。彼らは世界を「解明すべきパズル」として捉えています。S(社会的)タイプが「人のため」に動くのに対し、Iタイプは純粋に「知りたいから」動きます。
彼らは物事を深く突き詰めて考える力を持ち、表面的な理解で満足しません 。自ら学ぶ意欲が高く、常に新しい知識を求めて自主的に勉強を続けることができます 。
Iタイプが輝く仕事の共通点
Iタイプの人は、「探究や分析が求められる知的な職場(例:研究所、大学)」を好みます 。この「個人と環境の適合」 が満たされる仕事の共通点は以下の通りです。
- 複雑な問題やデータを分析し、仮説を立て、検証するプロセスが中心の仕事。
- 一人で深く集中する時間が多く、自律性が重んじられる仕事。
- 「物事を突き詰めて考えられる」環境。
Iタイプは「失敗」を「失敗」と捉えません。「失敗してもポジティブに考えられる人」とは、失敗を「次の実験に必要なデータAが得られた」という「分析対象」として冷静に捉えられることを指します。また、研究とは最終的にその成果を他者に伝える必要があるため、専門家同士で論理的に議論する「コミュニケーション力」も不可欠です 。
Iタイプの適職リサーチ(分野別)
① 自然科学系:
- 物理学者、化学者、生物学者、天文学者、地質学者
- 大学教授、博物館学芸員(キュレーター)(※I/A)
② 医療・生命科学系:
- 医師(特に研究医、病理医、精神科医)、歯科医師(※I/R)
- 薬剤師(※I/C)、医学研究者、臨床開発、遺伝子研究者
③ IT・データ系:
- データサイエンティスト、AIエンジニア、ITコンサルタント、システムアナリスト
- 金融アナリスト(クオンツ)、アクチュアリー、セキュリティ専門家
④ 人文・社会科学系:
- 経済学者、心理学者(特に実験心理学)、社会学者、歴史学者
- マーケティングリサーチャー、シンクタンク研究員
⑤ その他専門職:
- 弁理士、気象予報士、コンサルタント(戦略系)
小中高生へのアドバイス 今、何を学ぶべきか?
好きな教科: 数学、理科(全般)、社会(地理・歴史の分析、公民の理論)。
アドバイス: 図書館やインターネットで、自分の興味のある分野の本や論文をとことん読み漁ってみましょう。夏休みの自由研究などに全力で取り組むのも最適です。ただし、Iタイプの対極は E(企業的)です。自分の研究(I)がいかに素晴らしいかを他者に「伝え(S)」「説得する(E)」力も、将来的に必要になることを覚えておきましょう。科学コンテストへの参加や、自分の研究をブログで発信してみるのも良い訓練になります。
セクション5 【A】芸術的タイプ(Artistic)- 「美」と「新」の創造者
Aタイプのあなたはどんな人?
キーワード: 独創性、表現、自由、直感、非伝統的、感受性豊か、美的センス、インスピレーション、個性的。
A(芸術的)タイプの核心は、「内なるビジョンや感情を、独自の形で外部に表現したい」という強い衝動にあります。彼らは、六角形の対極にある C(慣習的)タイプとは正反対で、既存のルールや形式、マニュアルに縛られることを極端に嫌います。
秩序(C)よりも混沌(カオス)から新しい美を見出すことに価値を感じ、論理(I)よりも直感(A)を信じます。
Aタイプが輝く仕事の共通点
Aタイプの人は、「自由な発想や表現が求められる職場(例:デザイン事務所、劇場)」を好みます 。この「個人と環境の適合」 が満たされる仕事の共通点は以下の通りです。
- マニュアルや規則が少なく、個人の裁量やオリジナリティが評価される仕事。
- 「0から1を生み出す」こと、または「既存のものを美しく再構成する」ことが求められる仕事。
- ルーティンワークが少なく、常に新しい刺激や変化がある仕事。
Aタイプの適職リサーチ(分野別)
① 視覚芸術系:
- デザイナー(グラフィック、Web、ファッション、プロダクト、UI/UX)
- イラストレーター、漫画家、アニメーター、画家、写真家
- 建築家(※A/R)、インテリアコーディネーター
② 言語芸術系:
- 作家(小説家)、詩人、脚本家、コピーライター
- 編集者、ジャーナリスト(※A/I)、翻訳家(特に文芸翻訳)
③ パフォーミングアーツ系:
- 俳優、声優、ダンサー、振付師
- 音楽家(作曲家、演奏家)、歌手、ミュージシャン
④ メディア・その他:
- 映像クリエイター(YouTuber含む)、映画監督、CMプランナー
- ゲームクリエイター、ゲームプランナー
- アートディレクター、プランナー(広告、イベント)、フラワーアーティスト
- 学芸員(キュレーター)(※A/I)
小中高生へのアドバイス 今、何を学ぶべきか?
好きな教科: 美術、音楽、国語(作文、詩、古文・漢文の「美」)、英語(表現として)。
アドバイス: とにかく「アウトプット」する習慣をつけましょう。絵を描く、文章を書く、動画を撮る、楽器を演奏する、何でも構いません。そして、それをSNSやコンテストなどで「人に見せる」勇気を持つことが重要です。Aタイプの仕事は、自己満足(A)だけで終わるのではなく、それが他者の心に届き、評価される(SやE)こととのバランスの上に成り立っていることを知りましょう。
セクション6 【S】社会的タイプ(Social)- 「ヒト」に寄り添う支援者
Sタイプのあなたはどんな人?
キーワード: 共感、奉仕、協調性、コミュニケーション、教育、育成、傾聴、親切、チームワーク、人のため。
S(社会的)タイプの核心は、「他者の成長や幸福に貢献すること」に最大の喜びを見出す点にあります。彼らは、六角形の対極にある R(現実的)タイプとは異なり、モノや機械よりも「人の感情や可能性」に強い関心を持ちます 。
E(企業的)タイプが、人を「目標達成の手段」としてリード(Lead)する側面があるのに対し、Sタイプは、「その人自身」のために支援(Support)します。彼らはチームの調和を重んじ、優れた傾聴力と共感力を持っています。
Sタイプが輝く仕事の共通点
Sタイプの人は、「人との協働や支援が中心の職場(例:学校、病院、福祉施設)」を好みます 。この「個人と環境の適合」 が満たされる仕事の共通点は以下の通りです。
- 「ありがとう」という感謝の言葉が、お金や地位よりも大きなモチベーションになる仕事。
- 教える、助ける、癒す、励ます、調整するなど、人との密接なコミュニケーションが不可欠な仕事。
- 競争よりも協調が重んじられる、温かい人間関係の職場。
Sタイプの適職ディープリサーチ(分野別)
① 教育系:
- 教師(小・中・高・大学)、保育士、幼稚園教諭、塾講師
- 特別支援教育士、日本語教師、インストラクター(スポーツ、PCなど)
② 医療・福祉系:
- 看護師、介護福祉士、社会福祉士(ソーシャルワーカー)
- 臨床心理士、カウンセラー、キャリアコンサルタント
- 理学療法士(※S/R)、作業療法士(※S/R)、言語聴覚士
- 医師(特に小児科、精神科、家庭医)、保健師
③ サービス・対人系:
- カスタマーサポート、カスタマーサクセス
- ウェディングプランナー、ホテルスタッフ、客室乗務員、美容師
- NPO/NGOスタッフ、ボランティアコーディネーター
④ 組織内部系:
- 人事(特に採用・研修担当)、広報、秘書
小中高生へのアドバイス 今、何を学ぶべきか?
好きな教科: 国語、英語(コミュニケーション)、社会、家庭科、保健体育。
アドバイス: ボランティア活動や、クラスの係、部活動のまとめ役など、「誰かのために動く」経験を大切にしましょう。Sタイプの専門性とは「ただの優しさ」ではありません。それは、相手の課題を正しく理解し、解決に導くための「知識と技術(傾聴力、指導力、心理学の知識など)」です。心理学や教育学、社会福祉学などの本を読んでみると、Sタイプの「プロ」の世界が垣間見え、将来の解像度が上がるはずです。
セクション7 【E】企業的タイプ(Enterprising)- 「コト」を動かす説得者
Eタイプのあなたはどんな人?
キーワード: リーダーシップ、野心、説得、競争、目標達成、社交的、野心的、影響力、ステータス、リスクテイク。
E(企業的)タイプの核心は、「他者を巻き込み、説得し、組織(コト)を動かして、設定した目標を達成する」ことへの強い意欲にあります。彼らは、六角形の対極にある I(研究的)タイプとは異なり、知的な探求(I)そのものよりも、それをどう使い、現実世界で「勝利」や「影響力」を得るかを重視します。
S(社会的)タイプが「プロセス」や「全員の調和」を重んじるのに対し、Eタイプは「結果」と「効率」を重んじる傾向があります。彼らはエネルギッシュで、注目を集めることや、チームを率いることに喜びを感じます。
Eタイプが輝く仕事の共通点
Eタイプの人は、「競争や目標達成が重視される職場(例:営業部門、ベンチャー企業)」を好みます 。この「個人と環境の適合」 が満たされる仕事の共通点は以下の通りです。
- 自分の成果が、売上、利益、地位といった「数字」として明確に評価される仕事。
- チームを率いたり、他人を説得(プレゼンテーション、交渉)したりする場面が多い仕事。
- 活気があり、スピード感があり、挑戦的な環境。
Eタイプの適職リサーチ(分野別)
① 経営・企画系:
- 起業家、経営者、経営幹部
- 経営コンサルタント、プロジェクトマネージャー、商品開発、M&Aスペシャリスト
② 営業・マーケティング系:
- 営業職(全般、特に法人営業、不動産、金融)
- マーケティング担当、広告代理店(プランナー、営業)、バイヤー
③ 金融・法務系:
- 投資銀行家、ファンドマネージャー、証券アナリスト
- 弁護士(特に企業法務 ※E/I)、政治家、外交官
④ メディア・その他:
- プロデューサー(テレビ、ゲーム、イベント)、広報(PR)、ヘッドハンター
- 販売店の店長、飲食店のオーナー
小中高生へのアドバイス 今、何を学ぶべきか?
好きな教科: 社会(特に政治・経済)、英語(コミュニケーション、ディベート)、体育(リーダーシップ)。
アドバイス: 生徒会長、部活動のキャプテン、文化祭の実行委員長など、人をまとめて「コト」を動かす役割に積極的に挑戦してみましょう。人を「説得する」には、情熱(E)だけでは不十分で、論理的な裏付け(I)と、仲間からの信頼(S)が必要であることを学ぶ絶好の機会です。難しい内容を「面白おかしく解説する」ようなプレゼンテーション能力も、Eタイプにとって最強の武器になります。
セクション8 【C】慣習的タイプ(Conventional)- 「ルール」と「データ」の組織者
Cタイプのあなたはどんな人?
キーワード: 正確性、几帳面、計画性、信頼性、データ処理、組織的、誠実、ルーティン、マニュアル、効率化。
C(慣習的)タイプの核心は、「物事を秩序立て、正確かつ効率的に処理・維持すること」に価値を見出す点にあります。彼らは、六角形の対極にある A(芸術的)タイプとは正反対で、予測不可能なカオス(A)を嫌い、明確なルールと安定した構造(C)を強く好みます。
彼らがいなければ、どんなに素晴らしい R(製品)も、I(発明)も、A(作品)も、S(福祉)も、E(組織)も、社会で安定して機能することはありません。彼らは、社会の「当たり前」と「信用」を支える、「社会インフラの維持管理者」とも言える重要な存在です。
Cタイプが輝く仕事の共通点
Cタイプの人は、「定められた手順や正確さが求められる職場(例:市役所、銀行)」を好みます 。この「個人と環境の適合」 が満たされる仕事の共通点は以下の通りです。
- 明確な手順やマニュアルが整備されており、それに沿って正確に作業することが求められる仕事。
- データや数字を扱い、細部にまで注意を払うことが評価される仕事。
- 組織や社会の「当たり前」を支える、「縁の下の力持ち」としての誇りを持てる仕事。
Cタイプの適職リサーチ(分野別)
① 事務・管理系:
- 公務員(市役所など)、一般事務、経理、財務、総務
- 人事(労務管理)、秘書、医療事務、学校事務
② 金融・会計系:
- 銀行員(特に窓口・融資審査)、信用金庫
- 公認会計士、税理士、ファイナンシャルプランナー、保険の査定担当
③ IT・情報系:
- プログラマー(特に保守・運用 ※C/R)、システム運用・保守
- データベース管理者、Webコーダー、品質管理(QA)、テスター
④ その他専門職:
- 図書館司書、薬剤師(※C/I)、法務(パラリーガル)
- ロジスティクス(物流管理)、生産管理
小中高生へのアドバイス 今、何を学ぶべきか?
好きな教科: 数学(計算、データ整理)、理科(データ整理)、英語(文法)、情報。
アドバイス: お小遣い帳をきっちりつける、部屋の整理整頓を完璧にする、宿題のスケジュールを立ててその通りに実行する。そうした「当たり前」をキッチリと、苦なくできること自体が、Cタイプの素晴らしい才能です。その正確性と計画性が、社会のどれだけ多くの場面で「信用」として求められているかを知りましょう。PCスキル(特にExcelやデータベース)を磨いておくと、将来大きな武器になります。
セクション9 結論 – RIASECを「未来の自分」作りに活かす方法
あなたのタイプは一つではない ホランド・コードの組み合わせ
このガイドを読み終えて、あなたは自分がどのタイプに当てはまるか、見えてきたでしょうか。重要なのは、自分が「1つのタイプ」に当てはまるのではなく、「上位3つのタイプの組み合わせ」(ホランド・コード)で自分を捉えることです 。
例:「SAI」
- S(社会的): 人を助けたい。
- A(芸術的): その方法は、アーティスティックなものがいい。
- I(研究的): 心理学など理論的な裏付けも欲しい。
→ 適職例: 臨床心理士、アートセラピスト、NPOの企画職
例:「RCE」
- R(現実的): モノ(製品)を扱うのが好き。
- C(慣習的): それを正確に管理したい。
- E(企業的): そして効率的に動かして利益を出したい。
→ 適職例: 工場の生産管理、物流マネージャー、建設プロジェクトマネージャー
このように、コードの組み合わせと順番によって、あなたのユニークなキャリアの方向性が見えてきます。
「ハッキリしている」と「フラット」 分化(Differentiation)という考え方
RIASECの検査を受けると、特定のタイプ(例:I)だけが突出して高く、他のタイプは低いという「ハッキリした」結果が出る人がいます。これを「分化している」と言い、興味の対象が明確なため、職業選択の予測がしやすいとされます 。
一方で、特に小中高生の皆さんの場合、6つのタイプ全てが同じくらいの点数になり、グラフが「フラット(平坦)」になることがあります。
検査結果がフラットだった人は、「自分には興味がないんだ」と落ち込むかもしれません。しかし、それは全くの間違いです。ホランド理論では、この状態を「興味がない」とは考えません。これは「まだ経験が不足している」ために「好き」か「嫌い」かの判断がついていない状態、あるいは「あらゆる可能性に開かれている」状態を示しています。
もしあなたの結果がフラットだったら、それはチャンスです。このガイドで紹介した6つのタイプの活動を、あえて「全部」体験してみることを強く推奨します。
- R: モノづくり(DIY)をしてみる。
- I: 一つのテーマで自由研究をしてみる。
- A: 絵を描いたり、文章を書いて発表してみる。
- S: ボランティアに参加してみる。
- E: クラスのリーダーに立候補してみる。
- C: 家計簿や自分の持ち物を完璧に整理してみる。
これらの経験を通じて、あなたの「好き」と「嫌い」の輪郭がハッキリし、グラフに凹凸が生まれます。これが「分化が進む」ということです。
次のステップへ 検査結果を「行動」に変える
このガイドを読み、あなたのホランド・コードの「仮説」が立ったはずです。次はその仮説を「行動」に移し、検証しましょう。
具体的な行動として、厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「jobtag」を強く推奨します 。
ホランドの人の性格と仕事環境を表す6角形モデル
はじめに
ホランドの6角形モデルは、心理学者ジョン・ホランドによって考案された、人々の性格と仕事環境を表すモデルです。このモデルは特に中学生やその保護者にとって、将来のキャリア選択において非常に参考になるツールとなります。
6つの基本タイプ
1. 現実的(Realistic)
特性
リアル型の人々は、実際的で具体的なタスクを好む傾向があります。手を使って何かを作ることや、機械を操作することに興味を持つ人が多いです。
職業例
- 酪農家
- エンジニア
- 電車運転士
- 大工
- 造園士
- 消防士
- パティシエ
- 機械組立工
- 自動車整備工
- 漁師
- 測量士
- 通信士
- 太陽光発電メンテナンス技士
関連する教科・活動
- 理科
- 工作
- スポーツ
2. 研究的(Investigative)
特性
調査型の人々は、研究や分析が好きで、論理的な思考が得意です。科学的な問題解決に興味があります。
職業例
- 薬剤師
- 診療放射線技師
- 気象予報士
- ゲームクリエイター
- 化学者
- 研究者
- 調査員
- 学芸員
- システムエンジニア
- 臨床検査技師
- 獣医師
関連する教科・活動
- 数学
- 自然科学
- プログラミング
3. 芸術的(Artistic)
特性
芸術型の人々は、創造性が高く、自分の感情や考えを形にすることが得意です。
職業例
- カメラマン
- 演出家
- ウェブデザイナー
- 俳優
- 漫画家
- 作曲家
- 翻訳者
- 写真家
- ダンサー
- インテリアコーディネーター
関連する教科・活動
- 美術
- 音楽
- デザイン
4. 社会的(Social)
特性
社交型の人々は、人々と関わることが好きで、コミュニケーション能力が高いです。
職業例
- 医師
- 看護師
- ソーシャルワーカー
- 小学校教員
- 司書
- 指圧マッサージ師
- 外交官
- カウンセラー
- 保育士
- 警察官
- 美容師
- 航空客室乗務員
関連する教科・活動
- 国語
- 社会科
- ボランティア活動
5. 企業的(Enterprising)
特性
企業型の人々は、リーダーシップがあり、新しいプロジェクトやビジネスを成功に導く能力があります。
職業例
- ツアーコンダクター
- アナウンサー
- 新聞記者
- 放送ディレクター
- 販売促進員
- 生命保険外交員
- デパート仕入れ部員
- 会社社長
- 裁判官
関連する教科・活動
- 経済
- 社会科
- ディベート
6. 慣習的(Conventional)
特性
規範型の人々は、オーガナイズや計画をすることが得意です。データの分析や管理も好きです。
職業例
- 税理士
- 行政書士
- 秘書
- 一般事務員
- 医療事務員
- 空港旅客係
- 航空管制官
- 電話オペレーター
- コンピュータプログラマー
- 銀行出納係
- 公認会計士
関連する教科・活動
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タイプ同士の関係性と組み合わせ
この6つのタイプは、ホランドの6角形モデルで隣り合っているものほど、性格や興味が近いとされています。例えば、”リアル型”と”調査型”、”調査型”と”芸術型”は隣り合っているので、一定の共通点があります。一人の人が複数のタイプの特性を持っている場合も多く、それによってより多角的なキャリアを築くことができます。
なぜこのモデルが重要なのか?
- 自己理解: 自分がどのタイプに属するのかを理解することで、自己認識が深まります。
- キャリア選択: 自分のタイプに合った仕事や学問を選ぶことで、成功の可能性が高まります。
- 人間関係: 他人がどのタイプに属するのかを理解することで、コミュニケーションがスムーズになります。
まとめ
ホランドの6角形モデルは、自分自身や子供の性格と興味を理解し、それに合わせて最適なキャリアパスを見つけるための非常に有用なツールです。特に中学生は、自分自身の将来について真剣に考える重要な時期です。このモデルを用いて、ご自身やお子様の進路選択に役立ててください。

